寒さで目が覚めた、未だ空も明け切らん時刻。
外に出ると寒い寒い。
比叡を見上げると、
あ、白い。
今日、比叡を走りに行くと言っていた彼人は如何するのだろう?
行くのか?行けばそれはそれで辛くてオモロイやろうけど。
等と如何でも良い事を考えながら、行く先決める事も無く、
取りあえずいつもの準備だけを持って、何処でも行ける自転車で走り出す。
大きく方面を分ける分岐路まで、脳内地図を広げ行く先を考える。
四方の山は何れも白を頂いているからには、
あまり高度を上げると、雪が積もってる事は間違い無いので・・・、
よし、あそこの旧峠越えよう!
通りなれた田舎道をのんびり走る。
はらはらと雪まみえるも、空の色は高気圧の硬い青。
寒く無いと言える程に体温が上って来たら、エイヤっ!と足に力を入れる。
腿と、膝と、脹脛と、踝がビュンビュンとしなって、スピードに乗って行く。
カッコええ!俺の脚!なんて独りごっこしながら、息上げながら。
誰も見て無いし、誰に比べられる訳でも無いから、ごっこだけなら人畜無害。
大通りから逸れ、坂を上る。
一番軽いギアで良い、遅くとも結果上れればそれで良い。
大事な事は、その調子のまま、幾らでも漕げるという自分のポイントを守りきる事。
例えこの坂がこのまま10km続こうと、20km続こうと。
その余裕が、遠くへ攻め込む力の泉となる。
アスファルトを逸れ、旧道に入る。
雨でしっとりとしながらも、湿気を感じさせない程キリッと締まった冷たい空気は、
ビールの様な気持ちの良い喉越し、ドンドン吸える。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。ゴチです。
峠の取っ掛かりで一休み。
飛行機の音が雲に跳ね返って、ゴウンゴウン唸る。
それが行過ぎると、さっきまで降っていた雨が、
木の枝や、葉、枯れ草、岩、その他そこらじゅうのモノを伝って落ちる音が、
そこかしこに溢れ、その真ん中で呆けると同時に、やっと起きた気になった自分。
水はこうしてジワァ~っと浸透して行くんやなぁ、
今何だか気分が良いのも、吸って吐いてを繰り返している内に、
山の湿気が体に浸透しているからかも知らんな。
で、何故か「そうか、だからコーヒーはジワァ~っと落すんか。」と、
分かった様な分からん様な事を考え、
帰ったらたっぷり時間を掛けてコーヒーを落してみようと、決意する。