井戸端監視カメラ



暇潰し連載 「中村春吉 自転車世界無銭旅行 その31」

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しまった。
今思い出してしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本日は15日と言う事で休業日でしたが、
明日16日は、技術講習会参加の為、
14時からの営業とさせて頂きます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とお伝えするのを忘れていました。
今更ですが、何卒何卒~っ!

そして、明日は朝から電車でGO!です。

(31)土人の少年(ああ可愛い)





想像通り、この河は水が濁って底が見えないが、然程深くは無く、
また危険な場所も無く、無事に向こう岸へと着いたので、
僕は水牛の背から降り、一人一人子供の頭を撫ぜてやると、
子供等は無邪気に僕の手にすがりついて、
「おじさん、何か面白い物があるなら見せておくれよ!」と甘える。

僕は何か見せてやりたかったが、特別面白い物も無いので、
「おじさんはね、遠くから来たけど、何も面白い物を持って来なかったのだよ。
 その代わりに面白い音を聞かせてあげよう。」

と言いつつ、自転車のベルをリンリンと鳴らし、
腰に下げたラッパを持ち、ププーププー♪と巧みに吹き鳴らすと、
ベルの響きやラッパの音が余程珍しかったものと見え、
子供等は面白そうに浮かれ出し、ワイワイ言って騒ぐのです。

その様子があまりに可愛いので、僕も子供の仲間になった様な気がして、
そこで暫く遊び戯れていたのですが、フと思い出し、カバンの口を開いて、
「次は美味しい物を食べさしてあげよう!」
と言い、かつてシンガポールを出発する際、
堀君が贈ってくれたキンピラゴボウを取り出して、僕も食べて見せ、
子供らにも食べなさい、と与えてみると、
このキンピラゴボウは中々風味のよい物ですから、瞬く間に食べ尽くし、
もっと何か食べたい、という顔つきで指を舐めるのです。



もっと何か食べさせたいが、もう美味そうな物は無い。
「コレでも食べてごらん。」梅干を出しますと、
子供らはまた美味い物だと思って、一口に頬張ったが、
この辺の子供らは梅干など見たのは生まれて初めてだったのでしょう、
その味があまりに酸っぱいので、皆々顔をしかめて吐き出し、
「おじさん!これは嫌だ嫌だ!」と駄々をこねます。

その様子がいよいよ可愛らしいので、僕は本当に一人くらい連れて帰りたかったが、
そういう訳にも行かないので、切りの良い所でカバンを仕舞い、
再び自転車に跨って走り出すと、子供らは僕と分かれたくなさそうに、
しばらく自転車の後をついて走り、皆声を揃えて、
「ピピヨー!ピピヨー!」と叫びました。
何だか鳥の鳴く声の様だが、これはこの辺の土人の言葉で、
「おじさん万歳!万歳!」と祝福してくれているのでしょう。

すると、その辺で草を食べていた水牛までが、僕の方に向かってのどかに唸るのです。
その唸り声も、先日天幕を引っくり返した水牛の唸り声などとは違う様で、
気のせいか、どうも優しく聞こえる。



元々水牛は、至極性質の妙な巨獣で、
非常に猛悪な物もあれば、非常に温和なものもある。
また同じ水牛でも、非常に荒々しい時もあれば、非常に優しい時もある。
一概には言えぬが、意地の悪い主人に飼われている水牛は大抵意地悪く、
温和な主人に飼われている水牛は大抵温和である。

そうしてみると、この無邪気な優しい子等に飼われている水牛は、
やはり無邪気で優しく、主人と同じで僕の前途を祝福してくれているのではないか。



僕は子供らにピピヨー!ピピヨー!と祝福されて、
数万の美人や紳士に万歳万歳と言われるよりも、ずっと嬉しかった。
何処へ行っても、子供ほど可愛いものは無い。
土人の親達は、大抵憎憎しい顔をしていますが、子供らは実に可愛い。

僕には、ピピヨー!ピピヨー!と言う言葉が、
何だか「父よ、父よ」と呼ぶ様に聞こえました。
僕はまだ子供を持った経験が無いが、
本当に食べてしまいたい程可愛いというのは、この事だろう。



こうまで慕ってくれる子供らを、すっぱい梅干で困らせ、
そのまま立ち去るのは、どうにも忍びないので、
2,3町彼等の群れを離れたが、また引き返して近づくと、
子供らは予想外の出来事に嬉しそうに叫び、水牛など放り出して、
僕の周りを取り巻きました。

僕は彼等に何かやりたいが、ご存知の通り特別あげられる物は何も無い。
そこで、無銭番長としては大奮発!1円足らず入りの貧乏財布の紐を解き、
お宝10銭銀貨を、数名の子供に一つずつ与えると、
彼等は天に喜び地に喜び、前後左右から僕に飛びついてなかなか放しません。



ようやくなだめすかして、いよいよ自転車に飛び乗って立ち去ると、
無心の子供らも両目に涙を浮かべ、いつまでもいつまでも僕の後姿を見送っています。
僕も幾度と無く振り返り、何やら両目に涙の浮かぶのをおぼえました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

続く。
by kaleidocycle | 2011-02-15 17:24 | 暇潰し読み物
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