自転車屋の仕事(≒存在意義)というのは、売る・修理するという事よりも、
その一歩手前である
「計画立案」というのが重要なのではないかと思います。
お客様の脳内に浮かぶイメージをなるべく明確な形にするのは勿論、
予算を最大限効率的に配分する、というのも腕の見せ所でありましょう。
で、最近オーダー頂いた「粋な大人の通勤車両」というお題への回答はこんな感じ。
一見するとディスクトラッカーっぽいですが、
実際には巨大なストラグラー650です。
「あ、天気良いから自転車で行こ」と、
思い立った瞬間パッと乗り出せる、
そんな気軽さを求めてシングルスピード。
ムッチリしたWTB/Horizonを、
鼻歌交じりでスーッと転がす、みたいな。
ストラグラーには700cと650bがあり、
どちらを選んでもホライゾンを履かす事は可能です。
しかしリラックスポジションを自然に、となると、
650bに分があると判断して敢えて650b版。
長いヘッドチューブの気の抜けた感じと、
タイヤクリアランスの詰まり具合、
此処のバランス、良かないですか?
「良い感じに仕上がるんならPaulのハブとか入れてくれてもええで」
と優しい言葉を頂きましたが、ん~・・・通勤車両にポールはチョッとやり過ぎ。
普段使いの時計が金無垢のロレックス、みたいなギラギラ感が出ちゃいそうですし。
そもそも「軽くて弱い」ポールのハブは、
通勤車両にはミスマッチですから、
此処は直球でSurlyのハブを選択。
程々に強く、程々に美しく、
そしてステンレス製の小物は、
錆びてみすぼらしくなる事も無い。
また構成部品を全てシルバーで揃えると「偽クラシック調」になるきらいがあるので、
スポーク・クランク・ハンドルには敢えて黒い部品を配置してスッキリ感を演出。
って、書いてる自分でも「何ゴチャゴチャ言うてんねん」って感じますね。
でも「売るだけ・買うだけ」なら通販で良い事で、
そこに実店舗が入り込む余地は少ないと思います。
ポールやキングやフィルやホワイト、
そんな高級部品をてんこ盛りにしても、
必ずしも完成度に寄与するという訳では無く、
台座のボルトを
トラスネジにかえるといった、
小さい事でも完成度上がりまっせ!ってな事を、
提案する所に自転車屋の生きる道はあるのです。
・・・多分。
いや、そりゃ高級部品も御用命頂けるなら有り難いに決まっていますが、
お客様のニーズを最大限効率良くかなえる案を出してなんぼの自転車屋、
ケチ臭い提案をする事もありましょうが、何卒聞くだけ聞いてやって頂ければ幸いです。