ふ・ふぇ・・・ふぁ~ん!
当家の息子は夜泣きをしません。
実に優秀な奴です。
代わりに朝五時頃、突如泣きます。
睡眠欲に溺れる父を起こす為に、
泣いているのかもしれません。
ああ、優秀だ、オマエさんは優秀だよ。
有難う有難うと心の中で呟きながら、
父は着替え、走りに出ます。
一晩中降っていた雨も夜明けと共に弱まり、
ヤッケを着ていれば快適に走れるレベル。
このまま行けばやがて止むであろうと予想し、
出先で脱いだヤッケを担ぐ為、
CCPのビヨンドをポケットに忍ばす。
そう、世の中スムースに回そうと思うなら、
先読みと段取りが大事です。
日が射し蒸し暑い中をヤッケ着て走る、
どう考えても楽しく無いですからね。
しかし現実には晴れ間が覗く事など無く、
寧ろ標高を上げるに従い普通の雨に。
当然ヤッケを脱ぐ事はありません、
はい、段取りは見事空振りに終わりました。
空振りという名の敗北を喫したとしても、
懲りる事無く言います、段取りは大事。
今日コイツを組み上げるというのは、
昨日から分かっていた事です。
コイツと言うのは
クランパスOPS。
トラックエンドの通常版クランパスに乗っていた身としては、
ドロップエンドが選べるMDS
(モジュラードロップアウトシステム)のOPSはとても羨ましい。
とかそんな事はどうでも良いとして。
クランパスの完成車を組み上げる際、
用意しておきたい道具があります。
それが此方の
「アイロン」。
コレが有ると無いとでは、
組み上りに大きな違いが出ちゃいます。
クランパスの完成車には「ラビットホール」と言う、
穴空きのワイドリムが使われています。
その穴を防ぐ為に、リムバンドもとてもワイドで、
正しくは真ん中に真っ直ぐセットすべき。
正しくセットされているとこんな感じ。
バラから店で組む場合は間違う事も無いはずですが、
完成車の組み付けというのは、まぁ適当なモンです。
で、クランパス完成車を見て行くと、
ええ加減な感じでリムバンドをセットされており、
偏った状態になっている事が非常に多いんですね。
リムバンドが偏ると、それだけ穴との距離が近くなり、
チューブにエアを入れて膨らますと、
チューブがリムバンドを押して・・・。
チューブが直接穴から「コンニチハ!」しちゃう、
すると当然パンク乃至はバーストしてまう訳です。
それはマズイ。
と言う事でリムバンドを正しい位置に戻したい。
けど一度組まれてクセがついたリムバンドは、
中々素直に正しい位置には据わってくれません。
そこでアイロン登場。
アイロンをかけて、一度クセを取ってしまおうぞ。
そして再度セットすると・・・正しい位置に収まる、と。
普通店にはアイロンなんて無いですからね、段取りが大事なのです。
ただ今回作業した車両の片輪は珍しく綺麗にセットされていました。
せっかく用意したアイロンも50%しか活躍せなんだ、嗚呼空振り感。
まぁしかし「大丈夫!大乗仏!」なんて、
過信心で完成車に臨んではなりません。
完成車なんてのは
プラモと同じで、
とりあえず一台分の部品がついてるだけ。
ホイルのセンターなんてズレてて当然、
ハブのロックナットが緩々なのも当然です。
横触れは勿論、縦触れもブルンブルンで、
スポークテンションなんて概念自体無い。
このまま乗っても普通に走るだろうし、
殆どの人は違いを気付く機会も無いかも。
でも此処で是正する・しないで、
今後の寿命が絶対的に違って来るから、
やはりある程度の是正はすべきなのです。
ユーザーさんが乗るまでの段取りをするのでは無く、
乗って行く先の事までを段取りするのが
「仕事」。
クランパスに使われる29+専用チューブは、
初期ロットでムシの不良が多く見られ、
「穴が無いのに空気が抜ける」と、
悩んだクランパスユーザーも少なくないはず。
現在は改良されている模様ですが、
念の為ムシの増し締めと石鹸水による漏れ点検。
あとクランパスはチェーンステーとBBの接合部に、
ヨークと呼ばれるボックス形状を採用している為、
BBシェルの歪みが多めになってしまいます。
なので、BBシェルのタップ掛けは必須作業。
コレをしておかねば?BB着脱時に己が困る。
と、吠えてみましたが。
思ったより削り代は少なめでした。
フレーム製作の工程が進化してるんですかね?
空振りとは言わんまでも、ん~・・・チップくらいの感じでしょうか?
よく出来ていて嬉しいような~、意気込んだけど肩透かしで寂しいような~。
で、何の話でしたっけ?
物事を正しくスムースに回すには、
段取りが大事だで!って話。
空振りする事も多いけど、
それでも段取りしないよりかは、
絶対にした方が後悔無いし。
まぁしかしクランパスOPS、ええなぁ~・・・。